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 小学校に入学してからも、僕とヴァレリアは仲が良く、いつも一緒に登下校していた。  だけど小学校も高学年となり、ヴァレリアを異性としてみる意識が次第にふくらみつつあったころ、そんな生活が変わっていくきっかけとなった出来事が発生した。  火山――後にタイタニア火山と名付けられた――が大噴火を起こしたのである。  僕はテレビに映し出されたタイタニア火山が、轟音と共に夜空を真っ赤に染める火柱を噴き上げる姿を呆然と眺めていた。  遥か遠くの国の出来ごとであったが、やがてそれは僕の国にも無関係ではなくなっていった。タイタニア火山によって成層圏まで噴き上げられた噴煙は太陽の光を遮り、地球規模の寒冷化が引き起こされたからである。  タイタニア火山の噴火後、収穫の季節を迎えるころには、凶作による食料不足が世界各地で問題となっていた。  熱帯に位置する僕の国は、農産物の収穫における寒冷化の影響はそれほど深刻ではなかったが、海外で食品の需要が高まるのに伴って、国内に流通している食品価格が高騰し、生活を圧迫しはじめていた。  とはいえ僕の家は農園を経営していたから、生産した農産物が高く売れるようになったので、寒冷化は必ずしも悪いことばかりではなかったのだけれども。
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