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 ヴァレリアと僕が間もなく小学校を卒業しようかというころ、この国の最高峰であり、4千メートルを超える高さを誇るナヴァル山の頂に降雪が観測されたというニュースが飛び込んできた。  ナヴァル山は僕の家からも遠くにその姿を拝むことが出来る、この国のシンボルともいえる霊峰である。この山に雪が降ったことは、地球規模の寒冷化がとうとう目に見える形でこの国にも訪れたことを感じさせた。  そして、ヴァレリアと僕が中学生になって、他の学区の小学校に通っていた生徒が新たな仲間として加わると、状況は一気に悪くなった。  経済力に物を言わせてこの国に入り込み、上から目線で我が物顔に振る舞う外国人というステレオタイプなイメージをそのままヴァレリアに投影して、その不満をぶつけてきたのだから、たまったものではない。  ヴァレリアの両親は海外からこの国にやってきた移民であるが、ヴァレリアが生まれる頃には、すでにこの国に帰化していた。だから、地球規模の食料難に乗じて金儲けのために乗り込んできた、この国を蝕んでいる外国人とは根本的に違う。そしてなにより、ヴァレリア自身はこの国で生まれた、この国の人間であり、外国人ではない。  僕や先生がいくらそれを主張したところで、根本的な解決にはならなかった。  ヴァレリアに対し、差別的な態度で接するクラスメイトたちは、単に鬱積した外国人に対する感情のはけ口を探しているに過ぎなかったからである。
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