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 ヴァレリアと僕が同じクラスにいた中学1年生のころはまだ良かった。  ヴァレリアをかばうことで、僕に喧嘩をふっかけてくる男子はいたし、僕とヴァレリアの仲を冷やかす奴もいたが、そんなことは大した問題ではなかった。  僕はヴァレリアに対する好意を隠すつもりはなかったし、歪んだ劣等感からヴァレリアを差別する人間に負ける気はしなかったからである。  僕は決して自分から手を出すことはしなかったが、差別意識をもつ人間は正論をぶつけられると激昂するらしい。この時ばかりは僕を丈夫な身体に産み、そして育ててくれた両親に感謝した。  僕が不安になったのは、中学2年生になって、僕とヴァレリアが別のクラスに分かれてしまってからであった。  先生方が協力してくれたこともあって、表立ったヴァレリアに対する差別的な扱いはなくなりつつあったが、陰でヴァレリアを差別しようとする連中が、完全にいなくなることは望めそうになかった。
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