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 ヴァレリアが突然転校した理由はわからない。  差別扱いに耐えきれなくなった?……だけど、僕の知る限り、ヴァレリアの味方になってくれるクラスメイトは確実に増えていた。少なくも休み時間に1人で居心地が悪そうに席に座っているようなことは、なくなっていたはずだ。  何より、ヴァレリアは辛いことがあったとき、それを僕に打ち明けてくれていたはずだ。だからヴァレリアが転校を僕に伝えなかった理由もわからない。  僕はやりすぎたのか?……だけど僕は何か行動を起こす時でも、必ずヴァレリアに相談していた。偏見からくる差別扱いに、真正面からぶつかったところで、あまりいい結果を生まないことは承知していた。  ヴァレリアは最後に登校した日、僕にプレゼントをくれた。だから、ヴァレリアは決して僕が嫌いになったわけじゃないはずだ。  じゃあ僕から距離を置きたくなった……?  そこまで考えて1つ思い当たる節があった。 「ビアンカって、可愛いよね?」  それほど前のことではなかったと思う。ヴァレリアはある時、クラスでも男子に人気のある女子の名前を挙げて、唐突にこんなことを僕に聞いてきた。僕はそれに生返事で返したが、これはヴァレリアは遠回しに、他の女の子と僕が仲良くなるように促したのではなかったのだろうか。  僕はヴァレリアといつも一緒だったから、それを当たり前と考えていたが、彼女が僕以外の人と自由に恋愛することを望んでいたのだとしたら……?  自分自身を納得させることは出来そうにないが、そう考えると確かに辻褄が合う。ヴァレリアにとって、僕が恋愛対象には決してなり得ないのであれば、僕の存在は重荷でしかないのだ。
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