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 どんなに落ち込んでいても、時は僕の心が再び浮上するのを待っていてはくれない。  中学3年生となった僕は、自分自身の進路について決めなければいけない頃になっていた。  両親は将来僕が農園を継ぐにせよ、その経営について勉強して欲しいということで、僕が大学まで進学することを希望していた。  長引く地球寒冷化から、僕の家が経営する農園からの収入は上向いており、経済的にも僕の進学には全く問題はなかった。そして小学校の頃からヴァレリアと勉強を一緒にしていたこともあって、幸いにも僕の成績は悪くなかったのである。  正直、色々なことに疲れてしまっていた僕は、中学校を卒業したらすぐに両親の農園で働くのも悪くないと考えていた。だが、両親が共に働き盛りの時にわざわざ手伝ってもらう必要はないと諭され、とりあえずは高校進学を目指して、受験勉強を始めることに決めた。    あまり気の乗らないままはじめた受験勉強であったが、無理矢理でも何かに打ち込んでいれば、気持ちを紛らわすことが出来た。受験勉強と言う名の盾を使えば、わずらわしい人間関係を遠ざけることも出来ることも助かった。付き合いが悪いと非難する奴もいたが、人間関係に少し疲れていた僕にとっては、大した問題ではなかった。  そして僕はこの地区で一番の高校に合格し、進学が決まったのである。
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