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急いでインターフォンに映る人を見て、翼は両手で口を押さえていた。
なんで徹?
こんな遅くに。
急かすように徹がインターフォンをまた鳴らした。
苛ついたようなキツネ顔。
近所に迷惑だという必要がある。
もう、チャイムを鳴らさせないために翼は玄関へ走り扉を開け廊下へ出た。後ろ手に扉を閉めた翼を睨むようにしながら徹が
「お前ごときに俺の人生狂わせる資格はないんだよ。素直に俺と結婚してればいいだろ?お前みたいな地味で特に取り柄もない女と結婚してやるっていう男は俺以外、他にいないんだから」
だいぶ失礼なことを言いながら徹は翼との距離をかなりつめてきた。
「私、徹と結婚なんかしないって言ったでしょ。まだわからないの?」
面倒だが、この際きちんと文句を言おうと顔を上げた翼。
そんな翼の顔に被さるようにして徹が近付き、あっという間に徹の唇が翼の唇に無理やり重なる。
何故か魚を食べた時のような生臭い臭いがした。
「ん!やめっ」
じたばたと足と手を動かし、もがくようにして翼は、ようやく唇を離す。
それでもまだ、無理やり翼の顔を押さえこもうとしてくる徹。
「暴れるなっ、考えなおせよ翼。お前みたいな女は俺を逃したら一生結婚出来ないぞ!」
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