アンドロイドの五感

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「うわーっ、イヤだ、僕は、僕だ。この意識は自由に使う!」 叫ぶと同時にハッと有ることに気が付いた。自分で自分の顔を両手で覆っていたのだ。 その感覚に気がつき、ゆっくりとその手を広げた。 (普通の人の手だ。肌色、アンドロイドらしくない) その指先を再び顔に戻した。 (頬に触れた感覚がある。やわらかい。間違いない皮膚だ) 指先でつまんでみる。 「イテッ」 (痛みを感じる。もしや、また他の誰かに転生したとか?) 周りを見渡すと、そこは競技場のトラック。数本のランナーのコースに線が分けられている。 彼は、その内側のスペースに一人立っていた。 走り幅跳びや、高跳びなどに使う器具が置かれたままだ。   ぐるっと足元の回りに目をやると、高さ1メートル程の白色の四角いボックスがあり、そこから赤く細長いケーブルが伸びで、足元に落ちていた。 (もしかして、これが僕につながっていたあの『ネットワーク』というもの) ビビっ 電気的なノイズ音が響き渡った。 「どうやら、多次元との接触爆発せずに離脱成功したのよ。ジョーイ君! 聞こえてる!」 競技場の大型スピーカーから声が聞こえてきた。   「リサック教授!」 「見えてるわよ。ここよ!」 周りを見渡した。競技場中央の、コントロールルームのような部屋があった。そこで、手を振っている人影が見えた。 両手を激しく振っている。そのショートカットの髪、胸が派手に揺れている。   (クオンのモニターで見た、リサック教授に間違いない)
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