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名前もわからないお嬢様に連れ去られて、たどり着いたのは大きなお屋敷だった。私は唖然としてあまりにも広い庭を見渡していく。よく分からないオブジェクトや大きな噴水が規則正しく存在している。迷路のような植木なんてある庭初めて見た。驚く私の前をお嬢様はすたすたと歩いていく。私は気になっていたことを訪ねようとお嬢様を追いかけた。
「あの・・・・。」
「どうかしまして?」
「あなたは一体、何者なんですか?」
「あら?言ってなかったかしら?」
「はい、何も言われてません。」
振り返り様、綺麗な金髪が揺れた。車の中ではあまり見えなかったが、お嬢様の目は深いブルーで金色の髪とよく合っている。言動の雑さから受ける印象とは程遠く、その出で立ちはあまりにも美しかった。お嬢様が高らかに名乗りをあげる。
「私は雪見家の次期当主、雪見鈴蘭と申しますわ。」
風が吹いた。私と鈴蘭お嬢様の間をフワリと流れていく。赤い花びらが流れていくようにも見えた。ふと、鈴蘭お嬢様が呆れたような顔をする。
「ほら、行きますわよ。」
「私の名前とか聞かないんですか?」
お嬢様は今度は振り返らず答えた。
「宮下椿でしょう?知ってますわ。」
「え?」
今、何気なく怖いことを言われたような?なぜ一市民でしかない私のことを知っているのだろう。どこかであったことがあるとか?
「何してますの?こちらですわ。早くしないと日が暮れましてよ?」
「あ、はい!」
見知らぬお屋敷で迷子になるのも嫌なので、私は急いでお嬢様へとついていった。
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