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「れ、連絡?」
「さ、続けますわよ?ちょっと時間が押してますし。」
お嬢様が両手をパンパンと叩くと、クラシカルなメイド服を身に纏った女性が部屋へと入ってきた。女性の手には分厚い本がある。ずっしりと重そうな本を顔色一つ変えずに机へ置き、一礼して女性は出ていった。
「こちらがマニュアルになりますわ。それと、こちらが契約書、ペンはこちらをお使いなさいな。」
「私まだ、働くとは言ってないんですけど・・・。」
「そうでしたわ、私ったら、肝心のことを話していませんでしたわね?」
駄目だ、恐らく何を言っても都合よく解釈される。私は黙って仕事の話を聞くことにした。
「とは言っても、少し複雑な話でして・・・・家の者以外に話すのはご法度なんですの。ですから、契約書だけは先にサインを下さらないかしら?」
「はあ・・・・。」
そんな複雑な話なら、私以外にもっと適任がいるのではないだろうか。しかし、どうにも断ることができないのと、ゴシップへの好奇心から私は契約書にサインをした。
「では、ついてきてくださいまし。」
お嬢様の顔がさっきよりも真剣なものになっていた。私はまた、お嬢様の後へ続いて歩く。真っ赤な絨毯が続いている廊下をどんどん進むと、1つの扉の前でお嬢様は止まった。ドアノブの所に水仙の部屋、と書かれたプレートがかけられている。
「・・・水仙?私、鈴蘭ですわ。お話がありますの。入ってもよろしくて?」
お嬢様の声かけに、小さな返事が帰って来た。
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