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「・・・・どうぞ。」
扉が開く。お嬢様は私の腕を引っ張って素早く中へ滑り込んだ。パタン。すぐに扉が閉まり、辺りは真っ暗になる。わけがわからず、明かりを探したが、どっちを向いても真っ暗だ。
「・・・またこんな真っ暗にして・・・・。」
お嬢様の声が聞こえたかと思うと、ボウッとそこだけ明るくなった。
「椿さんは・・・いたわね。できるだけ私から離れないで下さいな。」
「はい。」
お嬢様の腕に抱きつく形で私は立ち上がった。どこから取り出したのか、お嬢様は燭台に蝋燭をさして、それに火をつけたようだ。
「水仙、近くへいらっしゃい。姿が見えないのなら話はできなくてよ?」
スッーと、影が現れた。前髪が顔まで覆っており、まるで貞子だ。私は恐怖でお嬢様の腕を持つ手に力が入ってしまう。
「椿さん、腕が痛いのだけれど・・・。彼女は水仙。私の双子の妹ですわ。」
「す、すいません。」
私は手の力を緩めた。目の前の水仙から表情は読めない。
「水仙、こちらは新しくメイドとして働く宮下椿さん。貴女の世話係もお願いしようと思っていますの。」
「・・・・はい?」
思わず聞き返してしまった。しかし、お嬢様は私のことなど無視で話を進めていた。
「顔は覚えたわね?それでは、今日はこれで・・・・。行きましょうか、椿さん。」
「は、はい・・・・。」
部屋から出るとあまりの眩しさに目が眩んだ。お嬢様は何も言わずにどこかへ歩いていく。どうしていいのかわからず、私はただついていった。
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