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25th Anniversary
「ごめんなさい。」
まだ化粧水も乳液もつけていない、涙で真っ赤になった顔で、私は居間でテレビを観ている彼のもとへ行った。
本当はお礼を言うべきなのだろうが、最初に謝っておかなければならないと思い、先に謝罪を述べたのだが、返ってきた返事は予想外のもので、「グォ―――。」と、いつも隣で子守歌の代わりに聞いているイビキが聞こえてくる。
私は少し落胆したような安堵しかのようなため息をつくと、彼の横にいき、少しだけ肩に頭をのせる。
いつ以来であろうか、旦那と触れ合ったのは。
すでに記憶から消えているほど、私たちはお互い触れ合っていない。
そして、久しぶりに感じる彼の体温は少し暖かく、それでいてほんのりと加齢臭が漂ってきた。
私のひざ掛けを、ソファーで寝ている彼に優しく被せると、改めて髪を乾かすために部屋にもどる。
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