隠しきれていない。

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 シシトウは萎れ、中身が空洞のような味と、揚げ過ぎて縮まってしまったエビは、衣との間に隙間が空きすぎて、美味しくない。  揚げ出し豆腐も、銀餡(ぎんあん)がダマになって、粉っぽくとても美味しいとは言えない代物だ。    夜遅くまで働いて、帰ってきたと思ったらこんな料理をだされたらどう思うのだろうか。  作り直す気力もないので、そのままラップをかけて私はお風呂に入り、すぐに布団で寝てしまった。  朝になって、いつ帰ってきたのかもわからない旦那を起こさないように、着替えを済ませて、台所に立つと、綺麗に表れた食器が乾燥機の中に入っている。  しかし、肝心のスイッチを入れてなく、乾燥機の中は結露していて、私は乱暴に蓋を開ける。  一応生ごみを調べたが、あの晩御飯を全部食べたようで、残した形跡はなく、私の食べ残しだけが箱の中で存在を主張していた。  金曜日の夜に、珍しく早く帰ってくるなり、着替えもせずにテーブルに着くと、私を座るように促す。  私は、作っている料理の火を止めるわけにはいかないと、断りを入れると、なぜか彼は少し寂しそうな表情で部屋に向かった。  そして、一緒に晩御飯を食べていると、旦那は不意に私に質問を投げかける。  「最近どうかしたか? もしかして疲れてる?」  「いいえ、そんなこと無いけど。」 「そうか、ならいいけど、それと大型連休は何か予定はあるか?」     
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