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そのまま立ち上がり、既に認識しているハルの部屋に連れていく。ベッドに優しく降ろすと、半分夢の中にいるのか口をもちゃもちゃと動かした。
「ほら、ベッド着いたよ?手離して?」
「ん~...やっ」
「もう、甘えん坊」
首に回されたままの腕を撫でて、俺もそのままゆっくりベッドへ横になる。本当に気がめいっているのか、俺を抱き枕のようにぎゅっとして眠る。
「こんな姿、俺だけにしてよ?」
ハルはむにゃむにゃとするだけで返事はなかった。
俺がハルにお兄ちゃん扱いされてるのは知ってる。
ハルは4歳年上のお兄さんと二人兄弟で、ハルに優しいお兄さんがとても大好きだった。でも、彼は俺達が大学2年の頃突然姿を消して...ハルはショックが大きく、塞ぎがちになった。
そんなところに、大学1年の頃からハルに好意を寄せていた俺がつけこんだ。想いなんてちゃんと伝えたことはないし、状況が状況だったから、甘えられる存在になってしまうのは仕方ないと割りきっていた。
この状態でも、ハルの心の拠り所になれるならそれでいい。自分にだけ弱いところをさらけ出してくれるハルが嬉しい。
「好きだよ...ハル」
おでこにそっとキスを落として、頭を撫でる。悪い虫は払わなくちゃ。俺がハルを守ってやるんだ。
完全に眠りに入ったような彼は、俺から手を離した。
隙を見てハルのシャツボタンに手をかけ、手早く外していく。起こさないように腕から抜いて、ズボンも静かに引き抜く。そしてそっとパジャマを着せてあげた。
生憎俺は明日早かったので、ハルの温もりを名残惜しみながら鍵を1つ借りて、家を出た。
──
扉が閉まって、春音はそっと目を開けた。
「ま、待って...い、いまのって......」
回っていた酔いが完全に覚めた彼は、頭にその事しかなかった。
「理仁が、俺のこと...好き...?」
頭が爆発しそうになったので、春音は取り敢えず寝ることにしたのだった。
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