イチカバチカのデート作戦

4/10
前へ
/79ページ
次へ
「どうしました?春音サン」 固まった春音さんの視線を辿る。するとそこに居たのは先日の夜春音さんを尾行......いや安全確認のために見守っていたときに見かけた男がいた。 「あぁ、ハルだ」 「りっ、理仁っ......」 にこやかに春音さんに笑いかけて、横にいた男女グループに声をかける。そしてこちらへ向かって歩いてきた。 春音さんは少し引きぎみだ。何かされたのだろうか。そんな奴を近付けるわけにはいかない。 反射的に春音さんを隠すように前に立つ。オレは首だけで軽く会釈した。 「どうも」 「こんにちは。僕は池邉(いけべ)理仁(りひと)です。ハル...いや、春音と古くからの仲なんです」 彼は人当たりの良さそうな笑みを浮かべ、丁寧にお辞儀してオレに挨拶をした。 しかしその目が少しも笑ってないこと、ハルへの笑いとは全く違うことはすぐに分かった。 「ご丁寧にありがとうございます。私は春音さんに教育を受けていましたアレックス・S・ケネディです」 こちらは一切取り繕うこともなく淡々と返す。すると彼はこちらを嘲笑うような視線を向けた。 「あぁ、もしかしてあなたが?」 「失礼ですが、何の事か存じ上げないのですが」 「ねぇ、ハル、この人が嫌がらせ(・・・・)してきた人?」 「う、うん、俺が教育係任された人だけど......」 「は?」 オレ達の中に少しの沈黙が走った。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

769人が本棚に入れています
本棚に追加