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「どうしました?春音サン」
固まった春音さんの視線を辿る。するとそこに居たのは先日の夜春音さんを尾行......いや安全確認のために見守っていたときに見かけた男がいた。
「あぁ、ハルだ」
「りっ、理仁っ......」
にこやかに春音さんに笑いかけて、横にいた男女グループに声をかける。そしてこちらへ向かって歩いてきた。
春音さんは少し引きぎみだ。何かされたのだろうか。そんな奴を近付けるわけにはいかない。
反射的に春音さんを隠すように前に立つ。オレは首だけで軽く会釈した。
「どうも」
「こんにちは。僕は池邉理仁です。ハル...いや、春音と古くからの仲なんです」
彼は人当たりの良さそうな笑みを浮かべ、丁寧にお辞儀してオレに挨拶をした。
しかしその目が少しも笑ってないこと、ハルへの笑いとは全く違うことはすぐに分かった。
「ご丁寧にありがとうございます。私は春音さんに教育を受けていましたアレックス・S・ケネディです」
こちらは一切取り繕うこともなく淡々と返す。すると彼はこちらを嘲笑うような視線を向けた。
「あぁ、もしかしてあなたが?」
「失礼ですが、何の事か存じ上げないのですが」
「ねぇ、ハル、この人が嫌がらせしてきた人?」
「う、うん、俺が教育係任された人だけど......」
「は?」
オレ達の中に少しの沈黙が走った。
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