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口を開き沈黙を破ったのはリヒトだった。
「あぁ、ご存知ないですか。アレックスさんはとても優秀だそうで、我々の気持ちなど分からないのでしょう。真の優秀は知能だけでなく周りの状態も把握できることを言うと思うのですがね」
とんでもない嫌みを言われ、オレは一歩彼に歩みより威圧した。
「そんなに目くじらを立てて、怖いなぁ。そんな風にハルのことも見下していたんですか?住む世界が違うと困りますね」
さらにまくしたてられ、オレは怒りで拳を握った。
(誘いに乗ってはだめだ。冷静にならなくては)
フーッと息を吐いて吸い、酸素を脳に巡らせ落ち着かせる。オレはなるべく拳に力を入れないよう努めた。
「何か勘違いされていませんか?私は春音さんのことを虐げたりなど一切しておりませんが。私は彼をとても敬愛しています」
そう言うとついにリヒトはオレを鼻で笑った。
「敬愛?面白いこと言いますね。日本語ちゃんと勉強したんですか?敬愛している相手を困らせる、まして泣かせるまで追い詰めるのがあなたの祖国の習慣なのでしょうか」
「泣かせる?」
「そうですよ、ハルの家にこの前行ったとき彼はあなたのせいで泣きました。嫌がらせをされたんだと。ハルはそうそう泣かないので、相当辛かったのでしょう」
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