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そして春音さんは、フードコートでの恥、付きまとうオレが迷惑だったこと、出来すぎる仕事、そしてそれを全部自分への嫌がらせだと思っていることをこぼした。
聞いたオレは絶句して、感情が一気に押し寄せた。
好意と思ってしていたことが仇になり恥をかかせてしまっていた自分を怒りが襲い、悲しみが襲い、悔しさが襲った。
全部春音さんを理解した気になって、自分の中で組み立てられた「情報」で春音さんを自分のものに出来るとおごっていた。
すべては、オレがどこかで人のことを見下し、典型的なパターンに分け、それにあった「対応」をしていたからだ。
この人は「こういう人間」だからこうすれば好かれる。この女はこうすればすぐにおちる。
そして春音さんへは、好きという感情があいまって、さらに酷いことになった。
結局自分が一番最悪だったのだ、と思い知った。
「......春音サン、ゴメンナサイ」
オレは席を立って、向かいに座っていた春音さんの横に行き、床にひれ伏せた。
「えぇっ!?ちょ...なにしてるの!!」
「ジャパニーズドゲザ...」
あんまり綺麗とも言えない床に額を擦り付け、オレは必死で許しをこうた。周りの客の視線が注がれている気がしたが、構わなかった。
「い、いいから!とりあえず頭あげてよ!」
「デモ...」
「もうっ...!そんなくよくよしてるアレックスなんか、嫌いになるよ!」
「エッ」
(それは困る!)
がばっと頭をあげると、彼はオレの手を引いて急いでカフェからでた。
「ど、ドコ、行く?」
「俺の家!」
春音さんはちょっと声を荒げながらずんずんと歩いていく。春音さんをすぐに送れるように、と家に近いカフェにしていたから5分と歩かずついてしまった。
アパートをあがってガチャリと鍵を開けると、春音さんは靴を脱いで、オレにも脱がせた。そして家の中へ押し入らせる。
「は、春音サン...」
「俺は!どうしてアレックスがそんなことをしてたのかが聞きたいの!俺のこと、バカにしてたからしたんじゃないんだろ!」
「あ、アタリマエです!オレは春音サンのことrespectしてマス!」
情けなくハの字に曲がっているだろうオレの眉毛はさらに垂れ下がってしまう。
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