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つまり貧乏の子沢山で、
まだ乳を飲んでいる末弟を抱えて
母は外で働くこともままならない。
どう考えても
リリアが働きに出るのが順当なのだ。
自分が不甲斐無いばかりに。
と――嘆く父を慰め。
大切な娘を娼妓にする位なら自分がなる。
と――無謀なことを言い出す母を説得して。
ソフィエルから遠く離れた
東部イーザイル地方のキルビカという、
王都に程近い都会の娼館で
働くことが決まったのだった。
そして、
仲買人のヴァンに買われて村を出たのが
七日前の早朝。
詳しくは聞かされないが、
それぞれ近隣の村から連れてこられた少女達、
ジュリアとアラベルも、
似たような理由でキルビカへ向っているらしい。
そして今は、
ソフィエルのある南部サーザイル地方から
イーザイル地方へ行く道中であり、
二つの地方の境界にある、
ズルファウスという巨大な森を
抜けている所なのである。
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