陰湿な森

11/17

155人が本棚に入れています
本棚に追加
/421ページ
つまり貧乏の子沢山で、 まだ乳を飲んでいる末弟を抱えて 母は外で働くこともままならない。   どう考えても リリアが働きに出るのが順当なのだ。    自分が不甲斐無いばかりに。 と――嘆く父を慰め。   大切な娘を娼妓にする位なら自分がなる。 と――無謀なことを言い出す母を説得して。 ソフィエルから遠く離れた 東部イーザイル地方のキルビカという、 王都に程近い都会の娼館で 働くことが決まったのだった。 そして、 仲買人のヴァンに買われて村を出たのが 七日前の早朝。 詳しくは聞かされないが、 それぞれ近隣の村から連れてこられた少女達、 ジュリアとアラベルも、 似たような理由でキルビカへ向っているらしい。   そして今は、 ソフィエルのある南部サーザイル地方から イーザイル地方へ行く道中であり、 二つの地方の境界にある、 ズルファウスという巨大な森を 抜けている所なのである。
/421ページ

最初のコメントを投稿しよう!

155人が本棚に入れています
本棚に追加