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森の中をどれくらい歩いただろうか。
折り重なる枝葉を縫って、
ぽつりと冷たい雫が落ちてきた。
舌打ちして
歩く速度を上げたヴァンに置いていかれないよう、
リリアは懸命に足を運んだ。
元々緩んでいた足許が段々とぬかるみを増して、
歩く度に泥が跳ね上がりドレスの裾や細い足首を
遠慮もなく汚していくが、
そんなこと気にしてはいられない。
紺地が所々褪色して白っぽく毛羽立った
薄っぺらなコートをびしょ濡れにして、
更にドレスにまで沁み込んでくる冷たい雨水は、
リリアの細い身体から体温までも奪っていく。
次第に歩みが鈍くなってきたリリアたちに、
容赦のないヴァンの怒声が向けられる。
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