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ぱちぱちと爆ぜるたき火に眼を向けながら
パンとチーズを食べ終えたリリアは、
羊肉を少しだけ歯で千切り、
ぎゅっと眼を瞑りながら咀嚼して、
水で胃袋に流し込んだ。
家畜の肉を食べ慣れていないせいか、
リリアはこの羊の肉はあまり好きになれない。
口に入れた時に舌に広がる
ほんのりと甘みのある塩味はまぁまぁだけれど、
噛み進めるうちに現れる肉本来の味には
正直なところ泣きたくなる。
だからと言って、
貧乏体質が遺伝子にまで
組み込まれているらしい彼女のこと、
大切な食べ物を残すなどということは
そもそも思いつきもしない。
干からびた羊肉に
ちびりちびりと噛り付いていると
嫌でも思考は故郷へと引き戻された。
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