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少ない惣菜を取り合う弟たちは、
時に力ずくで、
けれど時には思いやりでそれを解決する。
言葉を覚え始めた末妹はお喋りに夢中で、
彼女の皿の食べ物が忽然と姿を消す
……といった怪奇現象が起こることも
珍しくなかった。
賑やかな食卓に並ぶのは
質素な料理だったけれど、
何より家族の笑顔がご馳走だったのだと、
離れて初めてリリアは知った。
(あの少しガタつくテーブルで
みんなと食事をする日は、
きっともう来ないのね)
鼻の奥がつんと痺れてくるのを感じて、
リリアは慌てて干し肉にかぶり付いた。
そうしながら、
ふと周りに眼を向ける。
いつの間にかみんなは眠ってしまったようだ。
最後の一かけらを
水で喉奥に流し込んだリリアは、
小屋の内壁に背中を預け、
勢いを増す雨音と
ヴァンのいびきを聞きながら
そっと瞼を閉じた。
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