姿なき声

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覚醒した途端、全身に震えが走った。 もしかしたら寒さのあまり 目が覚めてしまったのかもしれない。 小屋の中は暗く、 たき火には微かにくすぶる 朱色が見えるだけだった。 相変わらずヴァンがいびきをかいていて、 途切れ途切れにジュリアとアラベルの寝息が聞こえる。 とにかくこの寒さを何とかしなければと、 リリアは冷え切った肩をニ・三度擦って、 壁を伝いながら薪を取りに行く。   そして、 かろうじて燃え残っている火種に、 薪の表面を細かく裂きながら 少しずつ載せていった。   ちろりちろりと紅い舌が踊り始めたのを 確認してから薪をくべると、 やがて熱気を孕んだ炎が燃え盛った。 人心地ついたリリアは、 座ったまま寝ていたせいで痛む首筋を揉みながら、 夜の帳が下りた外へ出て新鮮な空気を吸い込んだ。
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