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静か過ぎる夜中などに
耳の奥の方で感じる耳鳴り。
それに似た雑音に乗って誰かの声が、
かなり不鮮明ではあったけれど、
確かに聞こえたのだ。
リリアは身体ごと後ろを向いた。
しかし、
雨音が繰り返し柔らかな調べを奏でるばかり。
けれど確かに聞こえたのだ。
助けを求める声のようだった。
小屋へ戻り火の点いた薪を手に取ったリリアは、
ほとんど本能のまま小屋の外へと出ると、
松明代わりの薪をしっかりと握り直した。
薪の火もこれくらいの雨であれば、
少しの間なら消えないでいてくれるだろう。
声がした方向など分かるわけもないが、
リリアはまるで導かれるように足を進めた。
時おり後方を振り返り、
緑色の淡い光と、
中から漏れる暖かなたき火の色を確認する。
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