姿なき声

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そして、 どれくらい歩いただろうか。 小石か それとも地面にせりあがった木の根だったのか、 不意に足許を取られて転びそうになったリリアは、 短い悲鳴を漏らして、 指先に触れた木の枝をとっさに掴んだ ――刹那。   激しい頭痛と、 全身を針で刺されるような激痛が 華奢な身体を襲った。 「きゃあぁ……」 悲鳴をあげて反射的に掴んでいた枝を放した。 そして同時に、 反対側の手に握り締めていた松明も あっさりと手放してしまっていた。 ぬかるみに顔から突っ伏したリリアの鼻先で、 無常にもジュッという音をたて炎が消えていく。 「あぁあ。火がぁ………… それより今のは何だったのかしら?」   リリアはのろりと起き上がって、 頼りない月光の下、 呆然となりながら自分の掌を見る。
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