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不思議なことに、
この時になっても
恐怖心はどこかに身を潜めていて、
小屋に戻るという選択肢は頭に浮かばなかった。
そして、
十数歩ほど進んだだろうか。
今度は前触れなく、
再びあの激痛が襲ってきたのだ。
「痛っ!」
短く叫んで、
リリアはその場にうずくまった。
しかし、
次の瞬間にはやはり、
嘘のように痛みは退いてしまっていた。
先ほどと同じだ。
どこも何ともない。
(あたしの身体……どうしたのかしら?)
不安になって小屋の方へ顔を向けると、
赤みを帯びた光が点ほどの大きさで
視線の彼方にぼんやり映るばかりになっている。
身体のことも心配だ。
そろそろ戻ろうかと逡巡していると、
またも頭に声が響いた。
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