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『出して……れたら……』
「…………あなたは誰なの?」
リリアは眉間に皺を寄せて、
樹木しか見えない暗がりに向って尋ねた。
しかし
森閑としたその空気を震わすものはない。
いつの間にか葉をくすぐる雨音は止み、
代わりに霧状の飛沫が視界を曇らせている。
「どこに居るの?」
「出してくれって。どこから?」
「応えてくれなかったら、
出してあげられないわよ?」
矢継ぎ早に問い掛けると
『もう少し……』という声が返ってきた。
(もう少し? 先ってことかしら?)
そう思い少しばかり進むと、
ぼんやりと淡い緑色の光が見えてきて、
さらに足を進めた辺りに、
リリアたちが野営しているものより
幾分か小振りな小屋がはっきりと姿を現した。
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