姿なき声

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泥水を吸った服に体温を奪われて、 じっとしていると震えが止まらないほど 身体が冷えている。 もちろん この震えが寒さのせいだけではない事は 分かっているけれど、 何よりこれ以上 みんなのいる小屋から離れるのは危険だ。 「ごめんね。もうこれ以上は無理だわ」 そう言って 踵を返したリリアの視線のずっと先で 不意に光が揺らめくのが見え、 それと同時に、 ヴァンのものと思われる怒鳴り声が耳に届いた。 言葉は聞き取れない。 けれど不機嫌極まりない怒鳴り声が、 涙が出るほど嬉しかった。 紛れも無く鼓膜に響いてくる声に、 例えようのない安堵を覚えて、 リリアは小走りで明かりを目指した。
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