姿なき声

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「こ、ここです。 ここですヴァンさん!」 声に反応するように、 灯火がリリアの方へと向けられる。 霧雨のせいで距離が掴み難くなっていたようで、 思うほど遠くまでは行っていなかったようだ。 ヴァンの姿はほんの少し進んだだけで はっきりと認識できるほどの所にあった。 気が急いてまろぶように駆け寄るリリアを、 憤怒の形相のヴァンが待ち構えている。 「お前ぇは……どこほっつき歩いてやがった!」 「ごめんなさい。ちょっと……あの、 用を足しに出ていたら道が、その、 分からなくなってしまって……」   リリアは咄嗟の思いつきで嘘を口にした。 先ほどの出来事を正直に話せば、 身体を襲った異変のことも 話さなければならなくなる。 万が一病気だったりしたら、 きっと実家に突き返されてしまうだろう。 それだけは絶対に 避けなければならないと思ったのだ。
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