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「どうした? 小便か?」
「はい」
「あんまり小屋から離れんじゃねえぞ?」
「はい」
抑揚のないジュリアの声を
遠いところで聞きながら、
リリアはそっと瞳を閉じた。
雨も止み風もない森は本当に静かだ。
この森は虫の音さえも聞こえない。
薪の爆ぜる音がなければ、
静か過ぎてかえって落ち着かないくらいだろう。
しかし
そんな事を思っていた次の瞬間、
静寂を引き裂くように、
突如、奇妙な叫び声が耳に飛び込んできた。
「どうしたっ!!」
叫びながらヴァンが跳ね起き、
リリアとアラベルも慌てて上体を起こした。
「ヴァンさん? ……今の声……まさか?」
「お前ぇらはここに居ろ」
そう言い置いて、
ヴァンはランプに火を灯し
小屋を跳び出して行った。
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