姿なき声

17/36

155人が本棚に入れています
本棚に追加
/421ページ
どれくらい経っただろうか?  時間にすれば たいして経ってはいないのかもしれない。   それを裏付けるように、 リリアの持っている薪は それほど短くもなっていない。   けれど、 心細い思いでヴァンとジュリアの帰りを 待ちわびる二人にとっては、 とてもとても長い時間にも思える頃。 木立を縫って明かりが揺れるのが 一瞬だけ瞳に映った。 それほど遠いところではなさそうだ。   「ヴァンさん?」   光った辺りに眼を凝らしながら呼びかけるが 返事はない。   リリアは入口のところに座り込んで、 同じく外に眼を凝らしていた アラベルと顔を見合わせる。 「アラベルさん。今の?」 「うん。光が見えたね?」 やはり見間違いではなさそうだ。   けれど、何度呼びかけても、 声を張り上げても返事は返ってこない。 「どうしたのかしら……」 二人はしばらく顔を見合わせていたが、 やがてアラベルが訝しげに眉をひそめた。
/421ページ

最初のコメントを投稿しよう!

155人が本棚に入れています
本棚に追加