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「ねえ、何か音がしない?」
耳を澄ますと、
確かに音が聞こえた。
「そうですね……何の音かしら?」
枝の擦れる音に重なって聞こえるそれは――
「アラベルさん。
あたし……ちょっと見てきます」
ヴァンの言いつけを破ることになるが、
このままじっと待っているのは堪らない。
「あ……あたしはここに居ていい?」
四つん這いになって
顔だけを外に出していたアラベルは、
不安げに揺れる瞳でリリアを見上げている。
「もちろんです。
アラベルさんはここで火の番をお願いしますね」
リリアはまだ少し湿っているコートに袖を通して、
先ほど明かりの見えた辺りへと向った。
声を張り上げ二人の名を交互に叫びながら、
音を頼りに足を進めた。
だんだんと鮮明に聞こえだす。
ぬかるんだ道を歩く足音のような湿った音と、
もう一つ、
硬質な何かを噛み砕くような音がする。
(噛み砕く……ような?)
ドクンと鼓動が高鳴った。
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