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「……ぅ……ぁあ……」
胃の中のもの全てを吐き出したリリアは、
掠れる声で呻きながら踵を返した。
薪を放り投げて、
泥水を散らしながら逃げ出した。
走って走って走ってーー
幸い追いかけてくる気配がないことには
途中で気がついた。
けれど迫り来る恐怖から逃れるように走った。
いくら走っても
この恐怖から逃れることはできないと、
頭では分かっていても、
足を止めたら気が狂ってしまいそうだ。
方向など気にする余裕はなく、
ただがむしゃらに走った。
筋肉が悲鳴をあげ、
跳ね上がった心拍数に心臓が破裂しそうになる。
そしてとうとう、
上がらなくなった足を木の根っこにとられて、
走る勢いのまま
濡れそぼった地面に転がるように激突する。
「いっ……たぁ……」
ぶつけた後頭部を抱え込んで
痛みを堪えていたリリアは、
早鐘を打っていた心臓が何とか鎮まった頃、
初めて小屋を見失ったことに気がついた。
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