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少女=リリア・キャラベルは
大きな翡翠色の眼をぱちぱちと瞬かせた。
未だ幼さの残る面貌と、
柔らかな丸みに欠ける小柄な体躯。
艶のない蜂蜜色の毛髪は、その量だけは豊かで、
お下げに結ったそれが歩く度に
平べったい胸の前で重たげに揺れている。
ややあって
それが自分に向けられた言葉だと理解したリリアは、
眼前で眉を吊り上げている男の顔を見つめ、
「何でしょう?」と首を傾げた。
四十がらみの仲買人=ヴァンは、
抜きんでて長身というほどではない。
しかし、
無駄な贅肉のない引き締まった体躯とその所作には、
どこか獣を彷彿させるものがあり、
その体格以上に他者を怯ませる威圧感があった。
落ち窪んだ黒眼で
ぎろりと睨め付ける眼光の鋭さは、
さながら獲物を見据える野生獣のようだ。
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