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(きっと、あれだわ!)
安堵に胸が熱くなる。
込み上げてくるものを、
歯を食い縛って堪えながら、
間違いではないと、
そう確信が持てるほど近くまで歩み寄ったリリアは、
ふと耳朶をかすめた物音に足を止めて耳を澄ました。
「まさか……アラベルさん!
アラベルさん大丈夫ですか!」
もう周囲のことなど気にしてはいられなかった。
リリアはアラベルの名を叫びながら
一心不乱に小屋へと駆け寄った。
聞き間違いではない。
獣の唸り声と激しく争う物音が聞こえ、
出入口から漏れる影に
盛んに動き回る中の様子が窺える。
リリアは辺りを見回して拳ほどの石を見つけると、
それを拾い上げて出入口から中を覗き込んだ。
しかし次の瞬間、
妖獣の気を逸らすためにと握り締めていた石は、
目的を果たすこと無くリリアの手からするりと零れ、
泥を跳ね上げながら地面に落ちていった。
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