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ごろりと一度転がって動きを止めた石を、
リリアは見るともなく見やり、
よろけながら二・三歩歩いて背中を外壁に預けた。
そのまま、
崩れ落ちるように濡れた草の上にぺたりと座って、
力の入らない両手をだらりと脇に垂らした。
顎を上げて虚空を見つめる瞳 は
何を映しているのだろう。
アラベルを助けなければいけないと
思っていたのだ。
アラベルが身を守るため妖獣と争っているのだと
思っていたのだ。
けれど、そうではなかった。
リリアが見たのは、
肉塊を奪い合う二頭の妖獣の姿だった。
「……かあさま……とうさま……」
(ごめんなさい。リリアはもう無理です。
もうこれ以上……頑張れない)
吸い込む夜気の冷たさに
肺が悲鳴をあげている。
動かずにじっとしていると、
痩せこけた小さな身体など、
あっという間に凍えて衰弱する。
リリアは静かにそっと瞼を閉じた。
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