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耳孔に滑り込んでくる
おぞましい音から意識を逸らして、
故郷の家族に思いを馳せる。
このまま眠るように逝けたら
どんなに幸せだろうか。
生きながらにして
臓腑を喰らわれる恐怖を味わうくらいなら、
いっそ自ら命を絶つ方が
はるかに楽だとさえ思える。
家族のためと考え
自ら選んだ末路がこれとは――
もう身体の感覚も、
そして恐怖を感じる神経も鈍ってしまったようだ。
「……ごめんなさ……い」
やがて、
薄く開いたリリアの唇から
聞き取れないほどの囁きが漏れ、
力をなくした身体が
外壁に弧を描きながら地面へと崩れ落ちていった。
その時、
突如として
眠りを妨げる大声が頭の中で響き渡った。
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