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しかし呆気なく。
小屋からの明かりに照らされた
知性の欠片も見受けられない醜悪な小さな瞳と、
見つめ合うことになってしまった。
リリアは息を飲み、
吐息までも押し殺した。
どれ位視線を交わしていただろうか?
ふいと視線を逸らした妖獣は、
興味を無くしたかのようにあっさりと背を向けて、
茂みの奥へと分け入り、
そのまま暗闇の向こうへと
姿を消して行ったのだった。
『ふぅ……もういいわよ』
その合図でリリアは詰めていた息を吐き出した。
『中にもう一頭居るから大きな声は出さないでね』
「あたし、眼が合ったのに気付かれなかった」
独語するリリアの呟きに、
声の主が少しだけ笑った気がした。
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