姿なき声

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『ね? 大丈夫だったでしょ』 「……ホントね」 『じゃあ、今のうちにここから離れて』 「ねぇ。あなたはどこにいるの?」 『うふふ。どこにいると思う?』 「まさか!? あたしの頭の中に居るわけじゃないわよね?」 『やぁだ。 人間の頭の中に入る趣味はないわよ。 あなたに私を視る力がないだけよ』 「見る力? それはどういう意味?」 『言葉の通り。 それより、もう行った方がいいと思うわよ?』   もう動きたくない。 出来る事なら朝までここにいたい。 けれど、 濡れた服を着てじっとしていたら、 朝を待たずに冷凍人間になってしまいそうだ。 渋々立ち上がったけれど、 リリアの足はなかなか動き出さなかった。   声の主がたとえ妖属でも 今のリリアにとっては、 心強い仲間のような存在なのだ。 同行者を一度に失った今となっては、 進むべき道が前後左右どちらかさえ分からない。
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