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「何をキョロキョロしてやがる?
お前まさか逃亡の算段なんぞ
してんじゃねぇだろうなぁ?」
ヴァンは瞳に一際鋭さを加えて、
ほとんど問い掛けには聞こえない
低い声でそう訊く。
見る。という本来の役割に加えて、
酷薄である内面を知らしめるために
存在しているとも思える眼を見つめて、
リリアは一応質問の形を取っている
ヴァンの恫喝に即答した。
「いいえ。
そんなことは考えていませんけれど?」
首を傾げながら
鋭く細められた瞳を正面から見据えると、
ヴァンの顔が不満気に歪んだ。
けれどリリアはこの男が
自分に危害を加えることはないと分かっている。
だから怖いとは思わない。
理由はもちろん、
彼にとってリリアは大切な商品だからだ。
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