姿なき声

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ソフィエルで生まれ育ち、 サーザイル地方どころか 村から出たのも初めてなのに、 一人きりでイーザイルの街まで 辿り着く自信もない。  リリアはぎゅっと唇を噛んで つま先に視線を落とした。 「どこに行けば良いか……分からない……」 『行きたいと思った方へ行けばいんじゃないの?』 無責任な声の主の進言に、 リリアは頬を膨らませ誰もいない宙を睥睨した。 「だって…… 最初の一歩を踏み出す方向だって 分からないんだから」 『だったら足を上げて、 下ろした方向に進んでみたら?』 「……分かった。 もう行くわ。色々ありがとう」 微妙にかみ合っていない会話にため息をついて、 リリアは渋々歩き出した。
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