姿なき声

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「お腹が減っても食べるものはないけれど……」   一歩進んだところで立ち止まり、 振り向きざまにそう言ってみた。 『大丈夫よぉ。 この森には食べられる草花が たぁくさん自生してるから。 あぁそうそう。 初めて食べる植物は、 まず舐めてみることね。 舌が痺れるようだったら食べちゃだめよ?』 毒があるから。 と続くのを聞き終えたところで一歩だけ進み、 再び足を止めた。 「この後で妖属と鉢合わせたらどうしよう……」 『あなたは運が良さそうだから何とかなるわよ』 「……それは心強いわね」   ふらりと一歩だけ進んで振り返る。 「あぁそう言えば、 あなたの名前を聞いてなかったわ」 『あら。名前は訊いちゃだめよ?』   歩みかけていたリリアは、 前のめりになりながら、 上げていた足を元の場所に戻した。
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