姿なき声

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「駄目なの?」 『だめなの』 「……そう。 ……何だかあなたと話ができて、 あたし、 すごく元気になれたわ」 『それは良かった』 「ええ。 死んだほうがマシだって思ってた自分が、 馬鹿らしく思えてくるほどよ」 『そうね。 自ら死にたいなんて思うのは確かに馬鹿よね?  それより行かなくていいの?』 歩く事を忘れてしまったのか、 それとも歩きたくない本能がそうさせているのか、 本格的に立ち止まっていたリリアを声の主が促す。 「そうね、もう行かなきゃ」 言いながらリリアは、 のろりのろりと歩き出した。 「見ず知らずのあたしなんかに 親切にしてくれてありがとう。 さようなら」 『いえいえ……気にしないで。 さよなら』 「このままお別れするのが惜しい気がするけど、 さようなら」 『……うね。……しいね ……よなら』 「また会えるかしら?  会っていないけど……」 『……また……わよ……んきでね』
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