森の中の館

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「けれど、困ったわね……。 あら?  あれは何かしら?」   方向感覚が麻痺してしまい、 立ち止まったまま目印になるものはないかと 辺りを注意深く窺っていたリリアは、 やがてその視界が一部分だけ 他とは異なることに気が付いた。   乳白色の霧がそこだけ ほんの少し淡い気がするのだ。   注視しなければ分からないくらいだし、 もしかしたら気のせいかもしれない。 けれど、 どちらに進めば良いか分からない今は、 とにかくどちらかに進まなければならない。 だとしたら気になる方向へ向うしかないと、 リリアのシンプルな思考回路が告げる。   前方を手探りで確認しながら ゆっくりと進んでいると、 やがてうっすらと光が見えてきた。 「やっぱり。何かあ…… あら? なくなっちゃったわ」   うっすらと見えた気がした光は、 たちまち濃霧にかき消され、 その姿を眩ました。 「おかしいわね…… 確かに見えた気がしたのだけど……」   もしかしてこれも妖属の仕業なのかしら?  などと考えながら辺りに視線を走らせる。
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