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これが妖属の仕組んだ罠だとしたら、
これ以上は取りあわないのが賢明だろう。
だからと言って、
次に取るべき行動がリリアには判断できない。
せめて夜が明けるまで
身体を休める場所を見つけたいが、
一寸先も目視出来ない今の状況で、
深い森の中を彷徨するなど、
それこそ自殺行為だ。
もちろん、
この場にじっと留まっていれば、
夜明けを見る前に身体は凍りついてしまうだろう。
細い身体に腕を絡めて
冷え切った肩を摩りながら、
リリアは途方に暮れた。
疲れ切った身体を多少なりとも休めようと、
傍らの大樹に背中を預ける。
ゆっくりと瞳を閉じると、
樹齢数百年ともいえるだろう
大樹の生命の力を感じた。
森と共に育ち、
森を見守り、
そして森の一部である大樹は、
まるでその脈動でもってリリアに
何事か語りかけているようだ。
リリアは身体の向きを変えて
大樹に腕を回した。
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