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「立派な木――」
樹齢数百年ともいえる木は
リリアの両腕ではその径の半分にも満たない。
リリアが育った村の樹木とは違う匂いがした。
そんなことで
故郷を遠く離れたのだと実感させられて、
閉じた瞼にぎゅっと力が入った。
脳裏に浮かぶのは家族や親友の姿。
貧しくも幸せだったソフィエルでの日常。
「帰りたい――」
もちろん、
無事にこの森を出られたとして、
自分に再び故郷で暮らすという選択肢は
残されてはいない。
分かっている。
分かっていてもなお、
そう願わずにはいられないほど、
今のリリアは弱り切っているのだ。
「あなたのパワーを少しだけ分けてちょうだい?」
苔の生えた樹皮に額をつけて大樹に語りかける。
そうしていればほんの少しでも
心細さが薄れる気がした。
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