155人が本棚に入れています
本棚に追加
/421ページ
思った通りヴァンは忌々しげに
フンと鼻を鳴らしただけで、
リリアの頬を叩くことも、
髪を引きむしるようなこともしなかった。
その代わりに愉快気に口元を歪め、
リリアと、
それから彼女の後ろで身を竦めている
二人の少女に向って、
地を這うような声音で
意地悪く告げたのだった。
「逃げられるもんなら逃げてみろ。
このズルファウスの森にゃあ
小娘の血肉が大好物の妖獣が、
しこたま棲んでいるからな ぁ。
隙あら ばお前ぇらを喰らってやろうと、
舌なめずりしながら様子を窺ってるはずだぜ?」
ひひひ。という歪な笑い声に、
少女達が同時にひっと声を漏らした。
(あら?
妖属は夜行性だったはずだけれど。
あぁでも、こんなに薄暗かったら
そんな事は関係ないのかしらね)
リリアはそんなことを考えながら、
慎重に辺りを見回した。
最初のコメントを投稿しよう!