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「あ、あの……あたし。
ヴァンさんっていう仲買人さんと、
あとあたしよりもちょっとだけ年上の
ジュリアさんとアラベルさんと一緒に、
キルビカの娼館へ行く途中だったんです。
そうしたら森の中で妖獣に襲われて……
みんな死んじゃったんです。
……あたし一人だけになってしまって……
もう……どうして良いか分からないんです……」
すっかりいつもの口調に戻ってしまっているが、
男は別段気に留める様子もなく薄い唇を開いた。
「ほう。一人だけ助かった。それは強運だな」
「はい。護符を持っていました……」
見上げながらそう言葉にすると、
男の眉がぴくりと動いた。
「魔除けの護符か……
なるほどどうりで誰も出てきたがらないはずだ。
寄越してみろ」
リリアは言葉の意味を汲み取れないまま、
それでも言われた通りに、
首の後ろで結わえていた紐を解いて
護符を男へと差し出した。
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