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「ただの偶然だ」
眼に涙を浮かべるリリアに、
男は冷たく言い放ち言葉を継いだ。
「あの程度の護符を嫌うのは
せいぜい中級妖属までだ。
もちろんそれでさえ身を護るには
到底及ばないだろうがな」
魔術を操れないリリアには
護符の効力など分からない。
眉間に皺を寄せて首を傾げると、
リリアの意を汲み取ったらしい男は簡潔に告げた。
「嫌いはするが、恐れもしないということだ」
「……え?」
「その程度の護符などを持ち歩いて、
力の弱い者がことさらに刺激などをすれば、
苛立った妖属の格好の餌食となるだけだ」
男は腕組みをしながらそう言うと、
持ち上げた拳を顎に当てて
リリアをじっと見つめた。
瞳を細めて
探るように鋭さを増した視線に射抜かれて、
リリアの背に冷たい汗が伝う。
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