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「でもあたしは本当に――」
「言っておくが。
この森一帯は私の領地だが――
その私の領地を通行する際には、
然るべき手続きを行うことを義務付けている」
語る声音は穏やかで静かだが、
その奥底に存在する厳然たるものが、
リリアに反論はもちろん、
口を挟むことも許してくれない。
「通行の全てを私が管理しているということだ。
分かるか?」
「……はい」
「それなのに。
私はヴァンなどというブローカーへ
通行を許可した覚えもなければ、
そういった申請を受けた記憶もない。
これがどういうことだか分かるか?」
まるで見たもの全てを吸い寄せる力を
秘めているような瞳に捕らえられて、
リリアはただ僅かに首を横に動かすことしか
出来なかった。
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