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そんなリリアの様子に、
男はわずかばかり口の端を上げる。
「考えられるのは二つだ。
一つは。
ブローカーが無許可で森へ侵入した」
リリアの反応を確かめるように言葉を切り、
そしてゆっくりと継いだ。
「もう一つは。
お前が虚偽の申し立てをしているということだ」
「あたし嘘なんてついていません。
本当のことです」
「妖獣に襲われて、
森の往来に精通した屈強な男が死に、
お前のような小娘一人だけが助かったなどと
誰が信用する?」
「でも本当なんです」
「どちらにしても、
税も払わず、無断で
私の領地に踏み込んだことに
違いはないだろう?」
「そんな……」
リリアにとって、
この屋敷はやっと見つけた希望だった。
たった一晩だけ。
疲れきった身体を休ませて貰えさえすれば、
それ以上の迷惑をかけるつもりなど
毛頭なかったのだ。
(それなのに……)
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