森の中の館

20/36
前へ
/421ページ
次へ
嬉しそうに微笑んで、 不思議そうに首を傾げ、 怪訝そうに眉をひそめる。 ころころと変貌するリリアの表情を、 男は眼を眇めて注視していたが、 ややあって、 それまでの素っ気無い態度を改め、 僅かばかり表情を和らげた。 「部下の恩人となれば話は別だ。 遠慮することはない。 ゆっくり休んで行けば良い」 「本当ですか?」 「もちろんだ。 リリア・キャラベルと言ったな。 私はここズルファウス地方の領主、 ゼルラーデル・ヴェイセル・グレヴィリウスだ。 ……アンナ! アンナは居るか?」   リリアの問いに、 ゼルラーデル・ヴェイセル・グレヴィリウスという 舌を噛んでしまいそうな名を持つ男は あっさりと頷いて、 奥に居るらしいアンナという人物を呼びつける。
/421ページ

最初のコメントを投稿しよう!

155人が本棚に入れています
本棚に追加